今はその地下道も店鋪で埋まり私の生家とお隣にあった明治製菓の敷地が合わさって
台東区文化会館が建っていました。
観音様と仲見世と仁王門だけは、私の子供の頃の形を留めてい ました。
左隣りの和菓子の老舗は継承はしていましたがきれいに改装され
遠い私の記憶とは懸け離れた町に来たような寂しさがあらためて胸にこみあげてきました。
変わり果てた街を前にして呆然と立ちすくんでしまいました。
戦争の残酷さを今更ながら思い知らされました。
幼い頃の想い出の町も人も環境も奪い取ってしまった戦争。
現に私が今通ってきた浅草駅の地下道は昭和二十年三月十日の朝は
シャッターをしめられ蒸しやきになって亡くなられたまちの人で埋めつくされていました。


「戦争はいやだ・・・・・」


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雷門の停留場の前、仁王門前の生家は小料理屋でした



様々なおもいがこみあげてきました。
私は深く息を吸って心を静めました。
今日は冷静にあの日のことだけにしぼって歩いてみたい。
こうして生きていてその道をもう一度歩き直す事ができるのだもの。
その道を歩いてなにができるか考えたいと思っていました。
私は気をとりなおして目的を果たさなければならないと思いました。

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炎上する雷門の街店街